2021年9月4日・5日。
福岡県立ももち文化センター「ももちパレス」において沈黙劇「水の駅」が開催されました。
まあ、それに出ていたんですが。
僕自身も初めての「沈黙劇」。
登場人物は一切セリフを言いません。
最初この話を聞いたときは
無言劇なんて退屈に決まってる!
とタカをくくっていました。
蓋を開けてみたら驚きの連続!
無言劇と言ってるあたりがまだまだ浅い!と、あの頃の自分に言ってやりたいっ!!
だって沈黙劇ですからっ!
僕自身にとっても出演した作品の代表作ともいえる、いや、言いたい作品に仕上がりました!
その沈黙劇「水の駅」がどのようにして作り上げられたのか?
その過程をここに記そうと思います。
これを見たからと言って「水の駅」の解釈の足しになるとは思えません。
なのでこういう意味があったのでは?という僕個人の見解は省きます。
ただただやって来たことのみを記していこうと思います。
こんなこと
や、こんなこと
や、こんなこと
やこんなこと
考えてたやつと思うと面白いかもしれません。
沈黙劇『水の駅』とは?
まずは「水の駅」の説明をば。
『水の駅』1981年4月転形劇場工房で初演。完全な沈黙で演じることを前提とした一連の作品群の第一作。
舞台中央にある握り手の壊れた水道から絶え間なく水が流れ、舞台奥をゴミが山のごとく覆う。
少女、二人の男、夫婦、老婆などが水場に群がり、束の間互いに関わるが、やがてどこかへ去っていく。
円環構造を持つ9つの場面からなり、総勢約20名の人物が登場する。非常に遅いテンポで演じられるのが特徴であり、太田本人によると俳優は「二メートルを5分で歩くほどのもの」となった。
太田及び転形劇場の代表作であり、1981-88年までに24カ国、公演回数200以上を重ねた。
水の駅とは | 水の駅 mizunoeki onlineから引用
とのこと。
…わからん。
2メートルを5分?なんのために?
このどんなものになるか想像がつかないというのも初めての経験でした。そして戯曲というか脚本というかそれも非常にあいまいなのです。
これもデジタルアーカイブでありますから見てみてください。
読んでみてもさっぱりわからない。
もう、これは、演出の金世一さんに委ねるしかないわけです。
稽古期間
2020年に行われたワークショップ兼オーディションによって出演者は選出されました。
2021年7月26日からの合宿から稽古は始まる訳ですが、その前に2回ほどオンラインでの集まりがありました。
そこで基本的なこと、歩き方などのレクチャーがありました。
合宿稽古・前半
7月26日~30日、8月2日~5日の二回に分けて合宿稽古が始まりました。
公共の合宿所なのである程度の時間は決められています。
6:30 起床
7:30 朝食
12:00 昼食
17:30 夕食
21:00 入浴
22:30 消灯
みたいな感じ。
個人的なことですが、この芝居に出演するにあたりちょっと16時間空腹ダイエットをしておりまして。
僕は朝食を食べていません。
しかも酒類の持ち込み禁止だったのでこの期間は禁酒。
毎日水は2リットル以上飲んでましたから、体質改善合宿にもなりました。てへ。
この期間中8:30分に稽古開始となります。
叩き
朝一でやる稽古はその名も「叩き」
文字通り叩きます。
①なるべく異性とペアになる。
②うつ伏せ両手開きで一人が横になる
③もう一人が横になってるものの全身を叩く
というもの。
ある程度の刺激を与えなくては意味がないので結構な強さでたたきます。
背中から手の指先、モモ、ふくらはぎ、足の裏。
お尻のあたりはこぶしを握ってポコポコと。
稽古も後半になると個人個人の特性あるたたきになっていきましたが、合宿のころは言われるままにむやみに叩いてました。
ある女優は青あざができるくらい叩かれてましたw
稽古の後半になると各々オリジナリティーあふれる叩きとなります。
マッサージを取り入れたり、叩き方を変えたりと。
単純なたたきという行為ですが、パーソナリティが出てきて面白かったです。
PT体操
僕たちは便宜上(金世一さんがそう言ってるから)PT体操と言っていますが、韓国軍隊式精神強化及び体力強化訓練とでもいううものか…
「本来なら15段階に分かれている中の一つの動作」と僕はとらえています。
簡単に説明すると
①両手を水平にしながら足を開いてジャンプ
②手をおろしながら足を閉じてジャンプ
③両手を頭の上で合わせながら足を開いてジャンプ
④手をおろしながら足を閉じてジャンプ
これで1セット。
これを400セット(回)やる。
…地獄ですよ!
ワークショップの時は膝が痛く上半身だけでやってました。
もう、その時は3日目以降筋肉痛の嵐だったので、この合宿に入る前の3週間ウォーキングしながら上半身の動きを800回やってました。
そのかいあってか、足踏みをしながらの400回なんてお茶の子さいさいだったので、飛べるだけ飛んでみることに。
20回で足踏みに変更!早っ!
もうふくらはぎと脛横の筋肉がとんでもないことになってる。
経験者や若い人たちは400回飛んでるんですが、半数の人たちは飛べずに足踏みや脱落といった感じでした。
そんな僕でも、毎日やっていると最終的には300回飛べるようになりました。
ほかの人は500回飛んでましたが…
感想の共有
PT体操が合わると、クールダウンを含めての感想タイムとなります。
この感想タイムというのがかなり大事なもので、苦楽を共にし、その感想の共有・共感をすることでプロデュース公演のにわかカンパニーなのに、何年も続いている劇団のような信頼関係ができやすかったように感じました。
20名がそれぞれ感想言うので、この時間だけでゆうに1時間はありました。
ゼロ
これも正式名称はわかりません。
周りから見たら「瞑想」のように見えるかもしれませんが、僕は「自己確認」と考えています。
ざっくりやっていたことを書きますと
①足を肩幅に開いて、しっかりと立つ。上半身は楽に。
②音(日によって違う)の中で呼吸を整える。この時視線はある一点から外さない。
③ファシリテーター(この場合金世一さんですが)が支持することに従う。
ここが難しいのですが、合宿中は主に頭、首を分割して左右上下向けることをやっていました。
後半になるとさらに複雑になっていきます。
ここまで書いて思い出しましたが、前半(自由歩きが入る前。自由歩きって何?の人は目次で探してみてください)は「ゼロ」が終わった後に感想タイムだったような気がします。多分。
歩き
歩きの基礎を養うための訓練です。
- 3分の1ほど水の入ったペットボトルを頭の上に乗せる。
- 重心は後ろ目。前に行きすぎないように。
- 出す足は延ばす。曲げない。
- 腰を重く押し出すように重心移動。
- 重心移動中に息を吐く。片足が上がって着くまで深く息を吸う。
- ぺットボトルを落とさない。
- なるべくゆっくりとした動き。
のようなことを意識していました。
これがなかなか難しいのです。
3日目ぐらいでペットボトルを落とさないようになりました。
パターン歩き
歩きの訓練に3つのパターンを加えます。
このパターン歩きでも3分の1ほど水の入ったペットボトルを頭の上に乗せます。
また、ペアになって相手の呼吸と合わせます。
パターン①すれ違う時に顔を見合わせる。
眼だけで追わないように。
ゆっくりと動きながら首を使って目を合わせる。
パターン②手を交差させる。
パター1の動きとともにお互いがすれ違う方の手を前にあげ地面と平行に。
指の先から肩まで繊細に擦り合わす。
顔を見合わせるのを忘れずに。
パターン③片手を横に広げて相手触れたらその場で回転。
これは図解がないと解りづらい。
- パター1の動きとともにお互いがすれ違う方の手を横にあげ地面と平行に。
- 顔を見合せたまま、あげた手が相手の正面に来たら肩を軽く持ち、お互いの中心を軸に一回転する。
(これはわかりづらいので写真にとって解説します!)
以上が合宿の前半でやっていたことです。
これを8:30から21:00まで途中食事を挟みながら延々とやってました。
合宿稽古・後半
基本的に前半とやることは変わりません。
「ゼロ」で頭、首に加えて「胸」が分割する部分で増えました。
指示の仕方は「胸を左の方向に45度回転」みたいな感じです。
あと、「水の駅」の台本に沿って動いてみました。
この時点ではキャスト発表されていませんでしたから、各々がいろんな役をやりました。
この稽古も独特で、頭にペットボトルを置いて、基本の歩きを失わず、戯曲を口だて(ほとんどト書きのようなものですが)して、それに沿って動くというものでした。
「耳で聞こえたことを動作にする」というのも初めての経験で、なかなか面白かったです。
合宿後の稽古
基本的に10:00から20:00までぶっ通しでやります。
食事休憩は各々時間を見計らっていきました。
叩き→PT体操→感想共有→ゼロという流れは同じです。
ゼロに動きの追加
頭、首、胸に加え「腰」「骨盤」が追加されます。
骨盤の動きに関しては口では説明できないので今度動画で撮って上げます。
指示だけを書くとこうなります。
と、こんな感じ。
全然わかんないですよね。
これをゆっくりな動きで1時間ほどやります。
あと、後半になると足を横に広げるのに加えて前後に広げる動きが追加されます。
自由歩き
これも稽古中盤以降なのですが、パターン歩きに代わり自由歩きが入ってきます。
その名の通り自由に歩く。
基本の歩き方はそのままで自分が思うように歩くわけです。
それぞれ別のベクトルで歩くときもあれば、なんとなくストーリーが見えるように歩くこともある。
すべては自由なんです。
でも、この自由というのが難しい。
自由に歩けと言われたらどういう風に歩いていいのかわからなくなるんです。
さらにこの自由歩き、ゼロに続けてあるんです。
だから、ゼロと自由歩き合わせると2時間近く20人くらいがゆっくりな動きでうごめくわけですよ。
ちょっと異様ですよね。
一度お寺で稽古したことあったんですが、それはそれは異様な光景だったと思います。
シーン稽古
キャスト発表があってからは14:00くらいからシーン稽古に入ります。
セリフはないので動きはすぐに頭に入ります。
そこから何を表現して、何を削いでいくのか?
僕がやった「山の男」というのは非常にやりがいのある役でしたが、非常に難しかったです。
現時点での僕なりの「山の男」を表現しました。
沈黙劇『水の駅』はこうして創作された!42日間でやったこと。まとめ
いかがでしたでしょうか?
基本的には以上のようなことを黙々とやっておりました。
稽古というより「訓練」に近かったのかもしれません。
僕の今までの表現とはまるっと違う世界でしたけど、この42日間で感じたこと、考えたことは確実に自分自身にとっての「糧」となりました。
そして、この「水の駅」はこれで終わりではありません。
来年度以降のポーランド公演を見据えています。
一歩一歩、確実に歩み進んでいこうと思います。
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